天井クレーンの運転に必要な資格は?免許や技能講習を解説

公開日:2023/06/28

天井クレーンを運転したり操作したりするのには免許が必要です。また、資格もひとつではなく、労働安全衛生法でクレーンの種類やつり上げ荷重によって細かく区分されています。そもそも、なぜ運転や操作のために資格が必要なのか、免許の種類と難易度を合わせて解説します。

天井クレーンを運転するのになぜ資格が必要なのか

天井クレーンを運転するためには「クレーン運転士(正式名称:クレーン・デリック運転士免許)」の資格を取得している必要があります。資格を持たない無免許の状態でクレーンの運転や操作をすることは法律上、禁じられているのです。したがって、業務上、天井クレーンの運転・操作を行う、あるいは天井クレーンの運転・操作をできるようになって仕事の幅を広げたいと考えているのであれば、そのためにクレーン運転士の資格を取得しなければいけません。

なお、天井クレーンを運転するために資格が設けられているのは、荷物の落下事故・人身事故など重大な事故・災害につながる可能性があるからに他ならないことは、きちんと認識しておきましょう。

天井クレーンの免許とは

労働安全衛生法ではクレーンに関わる免許や資格については、クレーンの種類やつり上げ荷重などにより分類されて、その分類によって「免許」「技能講習」「特別教育」があります。作業の危険度によって、分類免許>技能講習>特別教育という関係性となっており、基本的には上位の資格を持っていれば下位の資格の業務も行えます。

なお、床上運転式クレーンは、コントローラーを使いながら、操縦士は床上で操作するクレーンのことです。工場や倉庫などでよく見かけるこちらも「天井クレーン」と呼ばれています。

免許の種類

天井クレーンの運転・操作するとき、つり上げ荷重5トン以上のクレーン・デリックの運転には、基本的に免許が必要です。クレーン免許を取得するには、安全衛生技術センターで実施する学科試験と実技試験に合格しなければいけません。

ただし、各都道府県労働局長登録教習機関の教習所で実技教習を受講して修了すると、実技試験が免除されます。実際に、先に学科試験をパスして、数回、実技試験に落ちてから合格したというようなケースも。実技試験は決して、簡単に合格できるようなものではありません。

クレーン・デリック運転士免許

⇒移動式クレーンを除く、すべてのクレーン・デリック

クレーン・デリック運転士免許(運転台付)は、つり上げ荷重5トン以上を含むすべてのクレーン・デリック(移動式クレーンを除く)の運転を可能とする資格です。マストまたはブームがあり、原動機のついたウィンチ(巻上機)でワイヤーロープを操作する「デリック」の運転が可能になります。

クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)

⇒移動式クレーン以外のすべてのクレーン

クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定・運転台付き)は移動式クレーンを除いて、つり上げ荷重5トン以上を含むすべてのクレーンを運転できる資格です。クレーン限定免許では、デリックの運転はできません。

クレーン運転士免許(床上運転士クレーン限定)

⇒床上運転式クレーン・ 床上操作式クレーン、つり上げ荷重5トン未満の移動式クレーンを除くクレーン

クレーン・デリック運転士免許(床上運転式クレーン限定)はつり上げ荷重5トン以上の床上運転式クレーンのほか、床上操作式クレーンが運転できる免許です。移動式クレーンを除く、つり上げ荷重5トン未満のクレーンの運転も可能になります。したがって、この免許を取得していれば、いわゆる天井クレーンの運転や操縦ができるようになります。

移動式クレーン運転士免許

⇒すべての移動式クレーン(公道の走行には道路交通法による運転免許証が必要)

移動式クレーン運転士免許は、つり上げ荷重5トン以上を含むすべての移動式クレーンを運転できる免許です。ただし、公道を走る際には道路交通法にもとづく運転免許証が必要である点に注意が必要です。

技能講習の種類

技能講習の修了によって運転できるクレーンがあるほか、つり上げ荷重1トン以上のクレーンの玉掛け業務を行うには、技能講習の修了が必要です。学科と実技の講習時間は決められているものの、すでに所有している資格によっては、一部の科目を免除できます。

技能講習は全国の都道府県労働局長に認可を受けた登録教育機関の教習所で実施しています。学科・実技の講習を受け、修了試験に合格すると、技能講習修了証明書が交付されます。

小型移動式クレーン技能講習

小型移動式クレーン運転技能講習はつり上げ荷重5トン未満の移動式クレーンを運転できる資格です。小型移動式クレーン運転技能講習は移動式クレーン運転免許よりも取得の難易度が低いので、つり上げ荷重5トン未満の移動式クレーンを運転するだけであれば、小型移動式クレーン技能講習で資格を取得するのも選択肢となるでしょう。

床上操作式クレーン運転技能講習

床上操作式クレーン運転技能講習は、5トン以上の床上操作式クレーン(無線式を除く)のほか、移動式クレーンを除く5トン未満のクレーンの運転ができる資格です。床上操作式クレーン運転技能講習は、通常3日間での学科や実技の教習に加え、修了試験を実施します。床上操作式クレーン運転技能講習は、クレーン関係の資格の中でも比較的取得の難易度は低いとされています。

玉掛け技能講習

玉掛け技能講習は、つり上げ荷重1トン以上のクレーンなどの玉掛け業務を行うために必要な資格です。クレーンの運転に関する免許・資格を持っていても、玉掛けに関する資格は別途必要なので注意しなければいけません。

天井クレーンを運転・操作する業務にあたるとします。クレーン・デリック運転士免許(床上運転式限定)や床上操作式クレーン運転技能講習の資格を持っていても、玉掛けに関する資格がなければ、荷のつり上げができるだけで、荷をフックにかけて運搬する作業全体を担当することができないのです。
クレーンを運転・操作するのはもちろん、玉掛けの作業も安全に行うためには、クレーンの種類や構造、機能、それから安全装置など、それぞれの特徴についての理解が必要となるでしょう。

特別教育

特別教育には「クレーン運転の業務に係る特別教育」「移動式クレーン運転の業務に係る特別教育」「玉掛けの業務に関わる特別教育」の3種類があり、特別教育は受講のみで取得できる資格のため、取得難易度は低く、初心者に向いているといえます。特別教育は、各事業所で実施するか、労働局長登録教習機関である教習所で受講が可能です。原則として受講すれば修了証の交付を受けられます。

例えば「クレーン運転の業務に係る特別教育」では、移動式クレーンを除く、つり上げ荷重5t未満のクレーンの運転に限られるなど、対応できる業務の範囲が限定されます。

つり上げ荷重1トン未満の天井クレーン(ホイストクレーン)であれば、玉掛けは玉掛け特別教育の修了で行えます。また、運転に関してもクレーン運転の業務に係る特別教育の取得で可能です。業務の内容に応じて、上位の資格を取るのではなく、特別教育での資格取得も検討の余地があるでしょう。

まとめ

天井クレーンを運転したり操作したりするのには、最低限、クレーン運転士免許(床上運転士クレーン限定)を取得していなければいけません。ただし、取得する資格によっては業務の範囲が制限されることもあるので、どの資格を取得するのか実際の業務を踏まえて検討することをおすすめします。また一貫して業務を行うのであれば玉掛の資格も取得することが望ましいでしょう。

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