物流の業務フローにおけるコストとは?コスト削減のアイデアもご紹介

公開日:2024/05/30

物流業務はさまざまなフローから成り立っています。しかしながら、日々行っている業務フローのなかでどのようなコストが発生しているのか、正確に把握するのは簡単ではないでしょう。また、昨今は原油価格の高騰などの背景から、物流におけるコスト削減の必要性も喫緊の課題となりつつあります。

本コラムでは、物流業務におけるコストの内容やコスト増加の原因、そしてコストを削減するためのアイデアを解説します。

物流のコストとは?

本項では、物流業務を行っていくうえで、発生するコストを解説します。

保管費

保管費とは、商品を物流倉庫に保管することでかかる費用です。たとえば外部の倉庫に商品保管を委託する保管費用などがこれに該当します。

また、保管費は3つの方法から算出可能です。

  1. 個建て保管費: 1期の保管費=(前期末の在庫数+今期の入庫数)×1個あたりの単価
  2. 坪建て保管費:保管費=1坪あたりの単価×使用坪数 ※1坪=3.3m3
  3. 容積建て保管費:1m3あたりの単価で料金を算出

荷役費

荷役費とは、物流センターから商品・荷物を入出荷する際、発生する作業にかかる費用です。物流センターでの入出荷では、入庫からピッキング、包装・梱包や流通加工といった業務が発生します。

また、上記の業務は基本的に人の手で行われる分、作業工程が多ければ多いほど荷役費は増えていく傾向にあります。

物流管理費

物流管理費とは、その名のとおり物流の管理にかかるコストです。ただし、物流管理の内訳は人件費の占める割合の大きい点が特徴といえます。

なお、既に製造された商品の流通前に発生する物流コストは「社内物流費」と呼ばれ、倉庫での保管費やその他コスト、輸送費などが含まれます。この社内物流費は、製品の製造にかかる調達物流費と区別され、これら2種類のコストを総称して物流管理費と呼ばれます。

輸送・配送費

そして当然、物流では輸送・配送費が発生します。工場・物流センターへ商品を移動させることを輸送と呼び、消費者や店舗へ商品を届けることを配送と呼びます。

輸送・配送費の内訳としては、宅配便などの小口配送料金や、遠方へ輸送する際に発生する航空便、船便などの配送料金、自社便で運行する際のガソリン料金なども輸送・配送費に含まれます。

物流コストが増加してしまう原因とは

物流業務にかかるコストが多岐に渡る点は前項で解説しましたが、なぜコストが増加してしまうのでしょうか。

本項では、物流コストが増加してしまう原因について解説します。

燃料費の高騰

新型コロナウイルスの影響による行動制限から脱しつつある中で、日本の経済活動は回復し、原油への需要も増加しています。

しかし、このような回復期の下で発生したウクライナ危機により、需要が供給を上回る状況が続き、原油価格が増加。こうした状況の結果として、燃料費の高騰が問題になっています。

国際情勢や社会的な背景の中で、物流コストの一つである燃料費は高騰している状況です。

ドライバー不足によるトラック輸送費の上昇

物流業界では、かねてよりドライバー不足が慢性的な問題です。社会的にはEC需要が増加しており、人材が必要な状況です。しかしながら輸送業務ができるドライバーは少なく、過剰労働による退職が問題となるなど、悪循環に陥っています。

物流への需要が供給を上回り続けている状況の中で、後述する2024年問題などもあり、人件費が増加、トラック輸送費の上昇という結果に繋がっています。

輸送需要の急速な成長

アフターコロナと呼ばれる時代のなかで、物流と大きな関わりのあるEC市場は拡大し続けています。基本的にECで注文された商品は注文者に個別で配送する必要があるため、物流の効率が低下。

今後もECでの輸送需要は成長を続けているとみられており、ドライバー不足に悩まされる物流業界においては無視できない課題の一つといえます。

2024年問題

物流業界における2024年問題とは、働き方改革法案によってドライバーの労働時間に上限が設定され、この結果予想されるいくつかの問題を総称したものです。

働き方改革法案によって、ドライバーの時間外労働時間は年間で960時間までに制限がかかります。この制限により、ドライバー一人当たりが走行できる距離はこれまでより短くなってしまい、長距離の輸送が難しくなると予想されます。

当然、これにより1日の間に輸送できる運搬量が減少するため、物流・運送業界における売り上げや利益にも打撃となることは想像に難くないでしょう。さらに前項までに紹介してきたコスト増加と相まって、二重の悪影響となる可能性があります。

2024年問題がコスト増に直接的な影響を及ぼすわけではありませんが、コスト増加が叫ばれる物流・運送業界にとって、無視できない問題の一つです。

物流コストの削減に役立つアイデア4選

続いて本項では、物流業務のコスト削減に役立つアイデアを4つのポイントから解説していきます。

物流拠点を集約する

複数の物流拠点を構えていることには多くのメリットがある一方、コストは確実に増加してしまいます。倉庫の運営・管理には人件費をはじめ、さまざまなコストが発生します。

そのためコスト削減を一番の課題として捉える場合、物流拠点を減らし、最小限の拠点に集約することで、コスト減の効果を期待することが可能です。

人件費を見直す

物流拠点においては多くの人員が必要です。ピッキングなどの軽作業や入出庫作業、事務、そしてドライバーなど、さまざまな業務を担う人々によって、物流倉庫は運営されています。

しかしながら、人員が多ければ多いほど人件費にかかるコストが嵩んでいくのも事実です。そのためコスト減を図るのであれば、人件費の見直しは一案といえます。

たとえば、軽作業にかけている人員は適正か、自動化できる領域はないかなど、各業務領域において「ヒト」にかかっているコストの「ムダ」や「ムラ」を洗い出すことで、コスト削減が期待できます。

業務フローを効率化する

人だけでなく業務フローも見直すことで、さらなるコスト削減に繋がることがあります。前述してきたように、物流倉庫での業務は、さまざまなセクションに分かれています。入出庫から軽作業、輸送や事務など、業務領域はかなり幅広いといってよいでしょう。

業務フローの効率化は、物流業界に限らず多くの業界で課題とされていますが、実現は簡単ではありません。一つ一つの業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を洗い出し、より効率的なフローにブラッシュアップすることで、業務効率が向上するだけでなく、コストの削減効果も期待できます。

システムを導入する

在庫管理や配送状況の管理を管理できるシステム導入により、コスト削減の助けになります。これは物流システムによって、人やお金の動きが可視化されるためです。物流におけるコスト削減では、費用だけでなく人的コストの見極めも重要です。

どの領域から物流のコスト削減を図るべきか見定めたうえで、業務フローを最適化するのであれば、物流システムの導入は効果的なアイデアといえます。

倉庫内環境を見直す

物流倉庫内の環境見直しも、コスト削減に役立つアイデアの一つです。たとえば倉庫内のレイアウトを見直し、より無駄のない構成に改善すれば、在庫管理の効率化などに繋がります。

前述したように、商品の保管費は物流倉庫の運営において主たるコストの一つです。倉庫内環境を改善することでより多くの商品を効率的に保管できるようになれば、コスト削減効果が期待できます。

アイデアを活用して物流コストを削減しよう

本記事では、物流倉庫の運営にかかるコストや、コスト増加の原因、そしてコスト削減に役立つアイデアを解説しました。物流業界は近年の社会情勢に大きく影響を受けていることもあり、コスト面のコントロールを行うのは簡単ではありません。しかしながらコスト削減の試行錯誤を繰り返すことで、社会状況の変化にも対応できる強固な運営体制の構築に役立つのは間違いないでしょう。
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