物流における破損対策にはどんなものがある?荷主ができる破損対策とは
物流において、破損は避けられない代表的なトラブルです。輸送会社も物流会社も、できる限り破損をゼロにするべく日々対策を行っていますが、破損による対策は荷主側でもある程度行う必要があります。では、破損に対して荷主側はどのように考え、対策を行えば良いのでしょうか。本記事では、物流における破損対策について、荷主側が行える対策をご紹介します。
国内輸送における事故の原因は?
「輸送貨物の事故情報に関するデータベース」によれば、国内輸送貨物における損害形態別の事故の状況は、以下のようになっています。
- 破損・曲損・凹損・変形…77%
- 濡損…8%
- 抜荷・不着・欠損…4%
- 汚損・汚染…3%
- 凍結・解凍…3%
- 変色・変質・劣化・腐敗…2%
- その他…3%(着臭、漏損、錆損、機器作動不良、乾燥事故など)
破損や曲損、凹損、変形などの物理的な損害が圧倒的に多いことがわかります。これは荷崩れや荷動きなどによって生じるもので、さらにこれらの8割はラフ・ミスハンドリングなどの荷扱不良、トラック輸送における急ブレーキ・急ハンドルなどの運転不注意が原因であるとわかっています。 物流においてはこれら破損、すなわち物理的な損害を防ぐため、貨物の性質を理解した上での丁寧な荷扱はもちろん、安全な輸送・運行が求められます。その他、輸送中に想定される衝撃に耐えられるような強度の梱包を施すことも重要です。
破損した場合の補償・対応
輸送時の荷物破損は、輸送会社が補償や対応を行います。金額は会社によって異なりますが、30万円を上限とした補償を行っている場合が多いです。ただし、以下のような場合に補償の対象外となるケースもあります。
- 破損しやすいもの、荷物の向きに注意が必要なものについて配送業者に伝えていない
- 荷物を受け取り人に引き渡した後、一定の日数が経過しても連絡がなかった
- 荷物の破損について、輸送業者の落ち度とは認められない
特に、輸送業者の落ち度が認められなかった場合、荷主の責任になってしまうケースもあるほか、補償があるからと言って荷主の損失や不利益がゼロになるわけではありません。顧客は販売した店舗に対して悪印象を持ってしまうこともあり、その場合は顧客満足度低下につながるため販売機会の損失が起こることもあります。輸送業者自身も配送に関する責任を負うことはもちろん、荷主側でもできるだけの対策を行わなくてはなりません。
荷主側で行える対策として、破損防止のための梱包があります。次章からは詳しい梱包のやり方、資材の使い方について解説します。
破損対策としての梱包
まずは、破損対策としての梱包について見ていきましょう。
梱包の基本的な考え方
輸送中に破損が起こる原因として、最も大きなダメージとなるのは落下衝撃とされています。つまり、落下衝撃に耐えられるような梱包を行うこと、落下の衝撃を緩和できるような梱包を設計することが最も重要です。そのためには、外装と荷物本体の間に十分な緩衝材が欠かせません。
資材
上記のように、荷物の梱包においては外装、緩衝材が必要です。さらにそれらを止める粘着テープの3つが梱包資材の基本です。
- 外装…段ボールや発泡スチロール、木箱、スチールなど。一般的な国内配送の場合は段ボールが多い。
- 緩衝材…外装と荷物の隙間に詰め、傷つきや破損を防ぐ。ビニールに空気の入った「気泡緩衝材」、ポリスチレンなどの合成樹脂のほか、丸めた紙や新聞紙、ラップなどが使われることも。
- 粘着テープ…クラフト(紙)テープ、ビニールテープ、布テープなどの種類がある。
外装に使われることの多い段ボールは、厚みではなく内部を支える「中芯」という波形の芯材の数で強度が決まります。粘着テープの種類もさまざまですが、荷物の重さによって選ぶとよいでしょう。クラフトテープは最もよく使われ、手でも切れるため使いやすいが、強度は弱いです。ビニールテープや布テープは切りにくい反面、強度が高く重ね貼りもできることから重い荷物にも使えます。
梱包の手順
梱包の手順は、大きく分けて3つです。
- 外装に商品を入れる
- 緩衝材を詰める
- テープで補強する
商品を入れる
梱包用の箱(外装)に商品を入れます。このとき、品物が小さく箱と品物の間に隙間ができる場合は、箱の中央に品物が来るように置きます。一つの箱に複数の品物を詰める場合、重いものが下に、軽いものが上にくるよう詰めていきましょう。
緩衝材を詰める
商品と外装の間の隙間に緩衝材を詰めます。前述のように気泡緩衝材、合成樹脂、丸めた紙や新聞紙などがあります。ただし、陶器やガラスなどの品物をそのまま詰める場合、緩衝材を詰め込みすぎると圧力で破損する可能性もあるため注意しましょう。衝撃が加わりやすい四隅、底部などを中心に緩衝材を詰めていきます。複数の品物を一つの荷物に詰める場合、一つひとつ緩衝材で包むことで荷物同士がぶつかって破損するのを防ぐことも重要です。
テープで補強する
最後にテープで補強します。補強の仕方には主に十時張り、H貼り、I字貼りの3つがあります。
- 十時貼り…箱の縦と横方向に、テープが十時になるように貼る。中心部分には圧力がかかりやすいため、そこを重点的に補強する貼り方。
- H貼り…箱の開閉部をH字に囲むように貼る。箱全体の強度が高まるため、破損を防ぎやすくなる。
- I字貼り…箱の開閉部の中心に、1本だけテープを貼る。十時貼りやH貼りと比べると強度的に劣るため、軽いものを梱包する場合に使われる。
段ボールや緩衝材の選び方
最後に、段ボールや緩衝材の選び方をご紹介します。
段ボールの選び方
段ボールは、ライナーと呼ばれる2枚の紙の間に中芯が入った、3枚の紙を組み合わせたものです。ライナーと中芯の材質は弱い順に以下の通りです。
<ライナー>
- C120…コスト特化
- C5…厚み3mmでよく使われる
- K5…厚み5mmでよく使われる
- K6…冷蔵や冷凍食品、青果や小型機器など特に破損が懸念される荷物に使われる
- K7…一般で使われることは少ない、非常に強い材質
<中芯>
- 120g…一般的な中芯
- 160g…大きめのサイズに使われる
- 180g強化…冷蔵や冷凍食品、青果や小型機器など特に破損が懸念される荷物に使われる
- 200g強化…一般で使われることは少ない、非常に強い材質
ライナーや中芯は強度が高いほどコストが高くなり、強度が高いものを使うほど破損のリスクも少なくなります。しかし、必要以上にコストをかけると物流費用を圧迫してしまいます。必要最低限の強度を見極めることが重要です。
段ボールにはもう一つ、中芯の厚み(フルート)も強度に関わってきます。代表的なフルートには以下のようなものがあります。
- 1.1mm F/F(エフフルート)…サイズ制限があるメール便、個装用のパッケージなど
- 1.5mm E/F(イーフルート)…メール便や個装用のパッケージなど
- 3mm B/F(ビーフルート)…比較的小さなもの、軽量物
- 5mm A/F(エーフルート)…最も一般的な厚み。幅広く利用されている
- 8mm W/F(ダブルフルート)…サイズが大きいもの、重量物、輸出物など
緩衝材の選び方
代表的な緩衝材には、以下のようなものがあります。
- 発泡ポリエチレンシート…ポリエチレン内部に細かい気泡を持たせ、シート上に加工したもの
- エアー緩衝材…エアークッションとも呼ばれ、ポリエチレンフィルムに空気を閉じ込めたもの
- 紙緩衝材…クラフト紙や再生紙などの紙素材を丸めたり、折り曲げたりしたもの。低コスト
- 気泡緩衝材…いわゆるプチプチと呼ばれる緩衝材で、気泡を等間隔でシートに閉じ込め、クッション性をもたせたもの
- 発泡プラスチック…発泡ポリスチレンは箱や緩衝材に、発泡ポリエチレンは果物を保護する網状の緩衝材に、発泡ポリプロピレンは耐油性の高さから機械類の緩衝材に使われやすい
それぞれの緩衝材の特徴をよく理解し、適切に使うことが重要です。
まとめ
国内輸送において破損は最も多い事故です。輸送会社において丁寧な荷扱と運転が求められることはもちろんだが、荷主側で破損が起こりにくいような梱包を行うことも重要です。梱包に使われるのは主に外装、緩衝材、粘着テープの3つで、それぞれ適切な材質を選んだり、商品に合った緩衝材を選んだり、粘着テープの貼り方を工夫したりすることで梱包を強化することができます。コストと強度のバランスをよく見極め、十分な強度を持った梱包を行いましょう。
ウチダフレイトでは、定期的にお客様とのミーティングを実施し商品特性や梱包方法等についての情報共有を行っております。路線会社をはじめとする協力運送会社へも輸送上の注意事項をお伝えし、安心安全な物流サービスの提供を行っております。安全で高品質な物流業務の構築をお考えの企業様は、是非一度お気軽にお問合せ下さい。