物流を効率化する方法とは?関連法案や必要性も併せてご紹介
物流はさまざまなビジネスにおける重要インフラの一つであり、物流なくしてはあらゆるビジネスが成り立たないとも言えます。しかし一方で、物流業界の人手不足や負担増加などが深刻化し、物流業務における効率化が重要視されていることも事実です。そこで、本記事では物流を効率化する方法についてご紹介します。物流効率化の関連法案や、物流効率化がなぜ必要なのかも併せてご紹介しますので、ぜひご一読ください。
物流効率化はなぜ必要?
そもそも、物流効率化が必要とされているのはなぜなのでしょうか。その背景には、3つのポイントが挙げられます。
ドライバーの高齢化、人材不足
物流業界の最大の課題とも言えるのが、ドライバーの高齢化と人材不足です。2019年国土交通省「物流を取り巻く動向について」によれば、トラックドライバー全体の年齢構成比で最も多いのは50歳以上であり、最も少ないのは大型のドライバーで21〜29歳、普通・中型ドライバーで30〜39歳とわかっています。
<2019年/大型>
21〜29歳…3.5%
30〜39歳…15.6%
40〜49歳…36.2%
50歳以上…44.7%
<2019年/普通・中型>
20〜29歳…20.8%
30〜39歳…16.5%
40〜49歳…21.2%
50歳以上…41.5%
少子高齢化の影響で人口が減少していることに加え、若年層にとって物流業界は肉体労働が多く、長時間労働になりやすい、その割に低賃金であるというイメージが強く、労働人口が集まりにくいのです。長時間労働の原因として、長距離ドライバーはそもそも運転時間が長いことに加え、配送先の倉庫やセンターで積み下ろしをしたり、待機したりする時間があることが挙げられます。
賃金や労働時間については、2024年問題と言われる時間外労働時間制限の猶予期限が迫っていることも考慮しなくてはなりません。働き方改革は職場環境の改善に向けた取り組みの一つであり、現行の労働者にとっては望ましいことではあるものの、人手不足が解消されないまま制限だけが先行すると、物流が機能しなくなる可能性もあります。人手不足を補うための効率化が急務といえるでしょう。
EC市場の成長による配達増加
物流業界は人手不足の反面、需要そのものは増加しています。その一端を担うのがEC市場の成長です。ネットショッピングの普及で個人宅への小口配送が増え、より多くの人手が必要になりました。しかし、大手ECモールなどでは送料無料など配送にかかる費用を減らすことを目玉にうたっていることも多く、配送業者への負担が増加する原因の一つになっています。
個人宅への配送では、休日や夜間の稼働になることも少なくありません。安いコストでたくさんの荷物を運ばなくてはならなくなったことで、ドライバーの負担は増える一方、賃金が上がりにくいことから、人材が余計に集まりにくくなってしまっているのです。そこで、業務効率化による負担軽減が求められています。
積載率の低さと再配達の増加
前述のEC市場成長とも関連しますが、個人宅への配送では輸送する荷物が少なくてもトラックを運行しなくてはならなくなり、積載率が低くなることも多いです。積載率が低くなると、人件費や燃料費などのコストパフォーマンスが低くなります。実際に、多くのトラックが積載可能容量の半分程度しか載せていない状態で稼働していると言われています。
こうした現状は、物流にスピード感が求められてしまうことに起因します。効率より速さが求められ、時間通りに運び届けることが最優先となってしまうのです。また、荷物を運んだ際に受取人がおらず、再配達しなくてはならない場合は、更に人件費・燃料費もかかります。どうしてもネットショッピングではこうした事例が多く、実際の配送件数を超える負担がドライバーへかかっています。そこで、業務効率化を行う事により、こうした非効率的な状態の改善が必要です。
国土交通省による「物流総合効率化法」とは
上記のような課題に対し、国土交通省は2005年に「物流総合効率化法」を施行しました。さらに2016年には改正され、法人格が別の2つ以上の事業者が連携し、流通業務の総合化・効率化を図る事業に対し、支援を行うことも盛り込まれました。具体的な取り組みとしては「モーダルシフト」「共同配送」「輸送網の集約」の3つが挙げられます。
モーダルシフト
トラックによる長距離輸送において、幹線部分を鉄道や船で輸送することです。トラックだけで長距離輸送するよりも多くの荷物を運べるため、人材リソースを大幅に削減でき、人材不足解消に役立ちます。燃料や排気ガスの削減にもつながることから、自然環境への負担を軽減できるほか、エネルギー効率もアップできます。
モーダルシフトでは、トラックと比べて鉄道や船は小回りがきかないことから、どうしても最後の部分はトラックなどで個別配送する必要があります。この点、輸送手段を上手く組み合わせなくてはならず、一事業者だけでなく業界全体として取り組まなくてはなりません。
共同配送
共同配送とは、複数の事業者が連携して共通の保管倉庫や輸送手段を使うことです。倉庫や物流センターを共同施設として利用したり、同一カテゴリの商品を配送先ごとに組み合わせて一括配送したりすることで効率化をはかれます。配送先にとっても、荷受け作業の効率化につながるでしょう。
もともとは、同じ配送先でも輸送業者が異なればそれぞれがトラックで輸送していました。複数業者が共同の倉庫で商品を保管すれば、同じ配送先に1台のトラックで輸送できます。人手不足に対しても、積載率のコストパフォーマンスアップにもつながります。
輸送網の集約
前述の共同配送にもつながりますが、今までバラバラだった輸送ルートを集約して効率化する方法もあります。各地に存在する物流拠点をルートの中央に置いた「輸送連携型倉庫」に集約し、輸送ルートをまとめることで、トラックの台数や走行量を減らせるでしょう。
これにより、従来は複数の荷主から預かった荷物を複数の倉庫に保管し、複数の納品先に納めるというバラバラな輸送ルートが一本化します。1つの倉庫に保管し、1つの倉庫から配送することで、人材不足にも燃料費の問題にも対応できます。
その他、物流業務を効率化する手法3つ
その他に物流業務を効率化する方法について、ここでは3つの手法をご紹介します。
現場作業の見直し
現場の作業フローを見直し、非効率な工程を削減することで効率化する方法もあります。マニュアル化された業務であっても、手順を改めて振り返ってみると無駄が生じていることもあるでしょう。本当に必要な作業なのかどうか考える視点が重要です。
効率的にピッキングするため倉庫のレイアウトを見直し、動線を最適化したり、倉庫内におけるロケーション管理を徹底し、どこに何があるかわかりやすくしたりしておくことも効果的です。このように、動線を最小限に最適化することを「間締め」と言いますが、この考え方が重要です。
IT技術の活用、DX化
WMS(倉庫管理システム)などのIT技術を導入し、DX化によって業務改革、根本的な効率化をはかるのもよいでしょう。例えば、ハンディスキャナと連動したシステムを使えば、商品コードをスキャンするだけでピッキングでき、各商品の状態もリアルタイムに反映されるため、在庫管理の負担を大幅に軽減できます。
また、トラックに積む荷物の組み合わせや配送ルートを自動で最適化してくれるシステムもあり、トラック輸送の無駄を削減するのに役立ちます。AIを活用した配車管理システムを使えば、アルゴリズムに基づいて配送先までの距離や倉庫内の車両状況、積載率、ドライバーの稼働時間などを考慮しながら配送ルートを作成してもらえるでしょう。
近年導入され始めているのが、ドローンによる物流業務の効率化です。特に、小口配送の場合に燃料費や人件費を削減できる手段として注目されています。
宅配ボックス
個人向けの小口宅配を効率化する手段として、宅配ボックスの利用も進んでいます。宅配ボックスに配達することで、再配達によるドライバーの負担を軽減し、燃料費や人件費のコストを削減できるほか、輸送で生じる二酸化炭素の軽減にもつながります。人への負担も自然への負担も減らせるでしょう。
まとめ
物流業界において、ドライバーの高齢化や人手不足が深刻化している反面、EC市場の成長や再配達の増加などにより、いっそう物流の需要は増えています。そこで、人手不足などの課題を解消するとともに増え続ける需要に対応する方法として、物流業務の効率化が必要なのです。国土交通省の「物流総合効率化法」では、連携による業務効率化には支援を行うことも盛り込まれています。
ウチダフレイトでは、複数のEC事業者さまから在庫管理など物流アウトソーシングを請け負うことで、共同配送や輸送網の集約に貢献することが可能です。物流におけるコスト軽減や負担軽減に関心がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。